【走順で差をつける!】 リオ五輪リレー銀メダルに見る、走順の考え方
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投稿者:荒川優元100m選手:スプリントコーチ

【走順で差をつける!】 リオ五輪リレー銀メダルに見る、走順の考え方
こんにちは!
先日閉会したリオオリンピック。
陸上の400mリレーで、日本チームがジャマイカに次ぐ銀メダルを獲得した光景が未だに目に焼き付いている方も多いのではないでしょうか!
9秒台が一人もいない中での偉業に、海外メディアも興味津々になっています。
そこで話題に上がるのが、「バトンパス」、ですが今回は走順の視点から少し書きたいと思います。
【レース展開にもズバリはまった最高の走順だった】
予選‐決勝と日本チームは、山縣‐飯塚‐桐生‐ケンブリッジの走順を組みました。
2・4走の直線区間でエースを置く、1・2走にエースを置くなどさまざまな考え方があると思いますが、日本代表を例に少し考察してみます。
1走は、唯一スタートブロックからのスタートを要求される区間なので、スタートからの加速に絶対の自信を持つ選手がふさわしいといわれています。
また研究から、カーブはピッチタイプの選手が有利とされています。
5ヘルツ(1秒間に5歩分の回転量)という「高いピッチが出せて、スタートにも絶対的な安定感のある」山縣選手が最も適任だったと思います。
2走は、約120mという最も長い区間を走ります。
さらに左手に持ったバトンを、3走の右手に渡すため、3走が2走の内側を走ることになり、通常よりバトンパスが遠くなりやすいです。
そのため「後半の失速が少なくなる、加速のうまさと後半の走りをまとめる技術を持ち合わせた選手」が向いていると思います。
飯塚選手は専門も200mで、スピード維持に長けていたこともあり、そこがフィットしたのだと思います。
3走は、見かけ上の順位が大きく変動する区間です。
これはメリットもデメリットもあり、内側のレーンの選手からすれば、外のレーンの選手をどんどん追えるので非常に気持ちよく走れます。
一方で外側のレーンの選手からすれば、たとえ同じ走力であっても内側の選手に抜かれてしまうので、体が硬縮したり焦りで体が浮いてしまうこともあります。
そのため、レーンにもよりますが、自分の走りができたときに爆発する「最もトップスピードが高い選手」を置くチームが増えています。
また1走と同じくカーブなので、ピッチタイプの選手が有効です。
桐生選手は、山縣選手と同じ5ヘルツのピッチを出せて、かつ追い風で9秒台も出しているように爆発力をもっています。
また今回は、内側のジャマイカと少し距離があり抜かれなかったことと、外側の中国などをうまく抜けたことで非常に気持ちよく自分の走りができたというレース展開の良さも幸いしました。
4走は、勝負が決まる区間なので、先行した選手以外は焦りで自分の走りができない区間といえます。
今回もケンブリッジ選手の横は、ジャマイカのボルト選手、カナダのダグラス選手、アメリカのブロメル選手という全員が世界陸上のメダリストでした。
一方でボルト選手には先行されたものの、ケンブリッジ選手がダグラス選手とブロメル選手に先行したことで二人とも自分の走りができませんでした。
その意味では、4走では「加速で先行でき、トップスピードの高い選手」が重要かもしれません。
ケンブリッジ選手は、日本選手権でもスタートこそ山縣選手に先行されるものの、そこから一気に差を詰めて逆転優勝しています。
このトップスピードが活きたと感じます。
もちろんカナダ、アメリカと僅差で4走にまわってきてから、バトンパス後には先行できていたという、バトンパス自体のうまさも忘れてはいけないことです。
もちろん走順に関しての考え方は多々あると思いますし、年齢や走力差によっても変わってきます(中学生では今回の組み方でうまくいかないこともあるかもしれません)。
また、レース展開にも左右されるので絶対的な正解は判断しにくいものです。
ただ今回の走順は、個人の特徴にもフィットしていたとともに、レース展開にもズバリはまったといえます。
日ごろから走順を固定するため、その日のレース展開に応じて瞬時に入れ替えるのはかなり難しいと思います。
それでも知っておくことでより戦略的な走順決めができることもあるので、参考になれば幸いです!
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筆者:
荒川優(あらかわゆう)
☆大学陸上コーチ(100m:10秒5) 指導申込: http://ランコネ.jp/
➣2010ニュージーランド・オタゴオープン 準優勝
筑波大学出身。スプリントコーチとして大学や子供たちの指導、メディアなどで活動。
オリンピック選手や格闘技世界チャンピオンなど、種目を超えてトップ選手のコーチも担う。
出演:NHK「テレビスポーツ教室」など多数。
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投稿者:荒川優元100m選手:スプリントコーチ
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