【恐怖を超えた究極のスタート】コールマンから学ぶスタートの極意
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投稿者:荒川優元100m選手:スプリントコーチ
【恐怖を超えた究極のスタート】コールマンから学ぶスタートの極意
クリスチャン・コールマン(Christian Coleman)は、世界歴代6位の100m9秒76の記録を有し、2019年のドーハ世界陸上で100m金メダルを獲得するなど、ボルトの続くスター候補と言われている選手です。
その特徴ともいえるのが、弾丸のように飛び出す「スタート」であり、60mでは世界記録保持者となっています。
彼のスタートの速さを今回は2つの観点で解き明かしてみようと思います。
①1歩目の爆発的飛び出し
まず分かりやすいのが一歩目の飛び出しです。
この時点で横の選手からすでに大幅なリードを獲得しています。
反応速度が速い、ブロックを蹴る力が強いなどとよく言われますが、私が着目するのは『股関節の伸展力』です。
これは股関節を勢いよく伸ばす力であり、動画で言うと4~5秒にあたります。
反応自体は両選手ほぼ同じなのですが、最初の支持脚(両選手とも左脚)が進展するタイミングを見るとコールマン選手が圧倒的に速くそこに達しています。
さらにそのときに足から頭までがきれいに一直線になっています。
経験者であれば、一歩目でこの角度にここまで一直線伸展できるだけのエネルギーを発揮することは容易ではないとこが分かると思います。
そのエネルギー発揮の肝となるのが股関節であり、このような股関節伸展の速さと強さが世界最高レベルであると感じます。
セットの状態からメディシンボールを投げだしてスタートする練習を見たことがある方もいるかもしれませんが、もしその練習をさせたらトンでもなく強いでしょう。
もちろんウエイトトレーニングのクリーンも非常に強いと思います。
<おすすめの意識>
どうしても足でブロックを押しに行くと、末端に意識が集中し飛び出し姿勢の獲得ができないことも多いので、股関節から力を発揮しその結果ブロックが強くプッシュされるイメージを持つことがおすすめです。
②2歩目以降の骨盤の位置
2歩目以降の骨盤に注目していただけると、横の選手よりもだいぶ前に常に位置付けられていることが分かると思います。
基本的に人間は身体の重さの中心点である重心が接地位置から垂直に引いた線より離れれば離れるほど倒れる危険性を伴うので怖さを感じます。
コールマンの状態で考えると、重心がかなり前にあるので、かなりの恐怖感が生じる状態にもかかわらず、全くブレーキがかかっていません。
通常であれば恐怖感を感じると、足を前に接地する、背中を収縮させる、腰を引くなどで重心点を戻して速度を調整しようと反射的に動いてしまいます。
それどころか、離地時にはさらに前傾を強めようとする揺らぎを使っており、さらに恐怖感が強まる状況を作っています。
イメージとしては、常にサバンナでライオンに追いかけられ、すべての力をアクセルに使っているような、常に火事場の馬鹿力状態といえます。
少し危険なのですが、7割くらいの力感で下り坂を思いっきり重心を前にして加速し、恐怖感に慣れる練習をするとコールマンに近づけるかもしれません。
<おすすめの意識>
2歩目以降の加速では、一歩一歩地面をプッシュした方が「やった感」が出ますが、重心を前に移動させ、足から頭までの斜めの一本線に向かって、きれいに力を伝えることを意識して行いましょう。
このときに少しでも「速さと強さ」が足りないと遊脚が正しく前に戻ってこないので、後ろで回らないような力発揮を心がけましょう。
それでは、引き続き目標に向かって頑張っていきましょう!
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筆者:
荒川優(あらかわゆう)
➣2010ニュージーランド・オタゴオープン 準優勝
筑波大学出身、選手時代の100mの記録は10秒5。
スプリントコーチとして、これまで40000人を超える数の選手を指導。NHKやフジテレビ、日テレ(ZIP)など各局で陸上の有識者としても活躍。
他、日香国際陸上合宿のコーチ日本代表(2018年~)、『ドリーム・スクール・キャラバン』代表コーチ(2017年~)も務めている。
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投稿者:荒川優元100m選手:スプリントコーチ
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